2016年3月香港。ぼくはアジアの陸鳥のモニタリングの会議に参加していました。ロシア,韓国,香港そして日本の関係者が集まって(中国本土は欠席)アジアの陸鳥のモニタリング体制を考えようという会議でした。ぼくは日本の事例として全国鳥類繁殖分布調査の話と季節前線ウォッチの話をしました。繁殖分布調査については,各国とも「すごいね,でもうちの国じゃ無理」という雰囲気でしたが,サハリンのPavel Kitarovさんが季節前線ウォッチに食いついてきました。英語で情報提供できるサイトがあれば,季節前線ウォッチに参加したい…。そこで,季節前線ウォッチの英語サイトをスタートさせました。
http://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/phenologywatch.html
とはいえ「データはあまりこないかもね」とそれほど期待していなかったのですが,嬉しい誤算で,イリーナ,サーシャ,ミーシャ,アレクセイなどロシアらしい名前の面々から,ヒバリ,ウグイス,カッコウの情報が送られてきました。情報数の多かったヒバリとカッコウについて紹介します。
ヒバリ
日本国内では,ヒバリの初鳴き前線は西日本から北海道へと,ゆっくり北上していきますが,北海道から先もゆっく北上していくようです。サハリンの初鳴き確認時期は北海道よりさらに遅い4月下旬から5月にかけてだったのです(図1)。
大陸のヒンガンスキー自然保護区からも情報が届きました。ヒンガンスキー自然保護区は北海道よりも北に位置しています。それにもかかわらず,初鳴き時期は北海道とほぼ同じ3月下旬でした。サハリンと比べてだいぶ早い。大陸の方が鳥の季節的な動きが早いのでしょうか? 大陸側の情報がもっとたくさん得られれば,わかってくると思います。
カッコウ
日本国内ではほぼ一斉に渡来するカッコウですが,サハリンでも,ヒンガンスキー自然保護区でも,そしてバイカル湖でもほぼ同じ時期に渡来しました(図2)。カッコウはロシアのかなり北の方まで分布している鳥です。どのくらい北の地方まで同じ時期に渡来するのでしょうか? ちょっと知りたいですね。
やってみると,さらに知りたいことが出てきたり,欲が出てきます。来年は韓国やロシアのもっと北の地方へとKISETSU-ZENSENの版図を拡げたいです。知りあいの韓国人やロシア人がいたら,ぜひ宣伝をお願いします。