○英名 Brown Shrike 学名 Lanius cristatus
○分類 スズメ目 モズ科
○鳴き声
目立つ場所で「ギュンギュン,キチキチキチ」などとモズよりもやや低く籠った声で鳴く.
○分布
北海道から本州中部,サハリンに夏鳥として飛来し繁殖する.中国南部,インドネシア付近で越冬するとされるが,別亜種との識別が難しいなどの理由で,正確な越冬地は不明である.
○巣
草木や根,獣毛やビニールなどでモズに似た椀型の巣を作る.巣は樹木の茂みにつくられ,高木の樹冠や低木の根本付近など高さは様々.
○食性と採食行動
様々な昆虫やクモ類,カエルやトカゲなどの小動物も捕る.電線や杭などに止まり,飛び降りやフライングキャッチによる狩りが多い.枝葉からついばんだり,ホバリング,ツグミ類のように地面を跳ね歩いて採食することもある.
○繁殖地がリンゴ園に集中
全国的に分布がかなり局所的となったアカモズだが,長野県ではリンゴ園に比較的多く生息している.
リンゴ園に繁殖地が集中する理由は不明だが,アカモズの繁殖に必要な条件はそろっているようだ.営巣木には葉の茂ったリンゴの木が多く選択され,営巣場所は豊富にある.巣立ち成功率は約7割と高く,失敗の要因は大半が捕食によるもので,巣内でヒナが死亡したのは50巣以上のうち1羽だけだった.捕食されなければほとんどのヒナが巣立つため,食物も十分にあると考えられる.
○モズとの種間関係
アカモズとモズが同所的に繁殖する場合,両種のなわばりは互いに重ならず排他的に分布することが知られる.著者の調査地では,元々のモズのなわばりが縮小し,アカモズだけでなく新たなモズも加わり間を埋めるようになわばりが形成された.
アカモズはよりリンゴ園の多い場所になわばりを構える傾向があった.早く繁殖を開始するモズは常緑針葉樹や展葉の早い広葉樹を営巣木として選択することが多い.リンゴは周囲の樹木より展葉が遅く,ちょうどアカモズの渡来時期に葉が開き,営巣可能となる.アカモズはリンゴ園になわばりをかまえることで,モズとあまり競合せずに繁殖を開始できるのかもしれない.
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