バードリサーチニュース

バードリサーチ大会2015 in 名古屋 開催報告

バードリサーチニュース2015年12月: 3 【活動報告】
著者:高木憲太郎

 

バードリサーチ大会のようす。写真は基調講演する岩崎哲也さん

バードリサーチ大会のようす。写真は基調講演する岩崎哲也さん

 バードリサーチ大会を名古屋学院大学日比野学舎で開催しました。当日はバードリサーチからの活動報告や全国鳥類繁殖分布調査の進捗状況の報告のほか、3題の口頭発表と9題のポスター発表をしていただきました。基調講演は、島における鳥類の生態とその研究の魅力について、大阪市立大学の岩崎哲也さんに話していただきました。
 また、ポスター発表と口頭発表の間の時間に、クイズ大会を企画しました。先日公開した「バードリサーチ鳴き声クイズ」を利用し、初級編で練習した後に、超難関のマイスター編で楽しんでいただきました。マイスター編は聞いたこともないようなものや、識別の難しいものの連発でしたが、最後はオオセグロカモメの声を、その鳥を研究している人がみごとに当ててトップとなりました。皆さんは、オオセグロカモメとセグロカモメの声を聞き分けることができますでしょうか?
 さて、講演内容からいくつかご紹介したいと思います。

基調講演: 「 島々における鳥の生態研究の魅力 」
岩崎哲也(大阪市立大)

 岩崎さんのお話は、自分が島での研究にのめり込んで行った経緯から始まりました。岩崎さんは修士課程までは琉球大に所属し、西表島でシロハラクイナの繁殖期の環境利用の変化について研究されていました。その研究から、シロハラクイナは、非繁殖期にはマングローブ林や雑草地なども利用するが、繁殖期の特に抱卵期までは背の高い大型草本環境を選択しており、利用する環境を変化させることで捕食者からの捕食を回避していることをつきとめたそうです。博士課程に進学後も、大阪市立大の高木昌興先生について、南大東島でダイトウコノハズクを題材に研究を進められています。大きな島ではないのですが、環状にならぶ防風林にびっしり隙間なく縄張りを構えていること、外部との交流がない個体群であることを活かした研究などを、指導教官や仲間の学生と一緒に行っているということでしたが、中でも強烈な印象があったのは、彼らの食性です。調べてみたところ、半分以上がゴキブリだったそうで・・・。かわいい顔をして、ほぼゴキブリのかたまりってことですね。この他にも、先生からの指示だと言いながら、巨大な魚や貴重な虫と指導教官のツーショット写真を紹介して笑いを誘っていました。桟橋のない島に上陸するときの、まるで貨物のような扱いや、島の人たちとの交流のようすなど、写真をふんだんにつかった講演で、島での研究の魅力満載の講演でした。

あなたもサギ師になれる! -高速インターのサギコロニー調査-
野澤徹也(日本野鳥の会愛知県支部)

東名阪自動車道の蟹江・弥富ICには、サギのコロニーがあります。一般道から上がったり下りたりするあの弧を描く坂道の真ん中の空間に木々が立ち並んでいるのですが、なにを思ったのか、サギたちが寝床に選んでしまったそうで。日本野鳥の会愛知県支部では、その個体数などの調査を行なっています。動画なども交えたわかりやすく楽しい発表でしたが、高速道路を走る車からの動画で、まるでクリスマスツリーのようにびっしりとサギがとまっている様子には感動しました。それだけ個体数が多いということですが、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギが混じる大きなコロニーで、毎月調査するのは、簡単ではありません。多くの方に参加してもらうための工夫、識別を補助するための方法など、僕らの活動にも参考になる内容でした。暑い夏には、識別のポイントを印刷したウチワを配ったそうです。

マイクロホンアレイで理解する野鳥の歌 鈴木麗璽(名古屋大)ほか
複数のマイクロフォンアレイで測る野鳥の位置 松林志保(名古屋大)ほか

マイクロホンアレイというのは、複数のマイクが一つに合わさったもので、ロボット聴覚を司るソフトウェアと組み合わせた鈴木さんたちのシステムでは、音の波長のずれなどから音の発信源の方向がわかるだけでなく、その音源を分類して、単離してくることができます。鈴木さんたちは、これを使って鳥のさえずりの研究をしています。時は金なり。せっかくの美声を奏でても、バックにまるで調和しない他種や他個体のさえずりが重なっていては、異性を惹きつける効果も薄れるというもの。いかにして、さえずりの重複を回避し合っているのか解明しようというのが鈴木さんのテーマです。この手の研究をしようと思った時、いままでは一人でフィールドに立って、首を振りながら記録をしたのでしょうが、聖徳太子でもなければ、同時に記録できる情報の量には限りがあります。その壁を突破する技術は、新しい研究分野の開拓にもつながるものだと思います。また、松林さんのテーマは、複数のマイクロホンアレイを林内に設置して、より正確にさえずっている鳥の位置をプロットしようというものです。技術的にはいくつか解決しなければならない課題があるようですが、テリトリーマッピングを自動化してしまうことができれば、行動の研究や、各種のモニタリングが大幅に発展するかもしれません。実機を展示しながら発表されていました。

 

手作り感たっぷりのバードリサーチ大会ですが、初めて参加された方も含め、フレンドリーな雰囲気だったと、皆さん楽しんでいただけたようで、ほっとしています。 至らぬところも多々あると思いますが、来年も同じ時期に、どこかで開催したいと思いますので、お住まいの近くで開催した時は、ぜひ、足を運んでいただけたらと思います。皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

鳴き声クイズで、スピーカーから流れる声に耳を傾け、壁に映写された3択に頭をひねる参加者

鳴き声クイズで、スピーカーから流れる声に耳を傾け、壁に映写された3択に頭をひねる参加者