バードリサーチニュース

2015年のツバメ繁殖状況調査結果

バードリサーチニュース2015年8月: 1 【活動報告】
著者:神山和夫

ツバメたちが南へ旅立ち,自宅や職場に巣があった皆さんは少し寂しい思いをされているのではないかと思います.今年,バードリサーチでは4~8月まで毎週金曜日に週刊つばめニュースというメールマガジンを発行していました.その読者の皆さんに参加していただいたツバメの繁殖についての調査結果をご報告しましょう.

ツバメの数と繁殖時期

図1

図1.近所のツバメの数を例年と比較(n=82).

 繁殖状況についてアンケートを行なったところ,84名から回答をいただきました.ご近所のツバメの繁殖状況について,例年と比較してツバメが多いか少ないかという質問に対しては,少なかったか,もしくは同じだったという回答が多くなりました(図1).「今年のツバメの数はどうなの?」という質問をよく受けるのですが,全国的な定量調査は難しいため,このようなアンケートで全国的な年変動を調べることができるのか,今後も検討しながら調査を続けてみたいと考えています.次に,1回目の巣立時期を見たところ,西の方が早いことが分かりました(図2).初認調査でもツバメは西から先にやって来ることが分かっていましたが,繁殖開始も西の方が早いことが裏付けられた結果になりました.

図2

図2.1回目の繁殖の巣立時期と経度の関係.

卵数調査

ツバメの産卵時期に自宅や職場の巣を棒の先に付けた鏡でのぞき,卵がそれ以上増えなくなったときの数を記録してもらいました.卵の数は1~6卵で,大半は5卵か6卵でした(図3).さらに卵数を時期別に見ると,繁殖時期の後半ほど減少する傾向がみられました.また,地域差についても調べてみました.産卵時期の影響を除外するために5月10日までに卵数を調査した22巣を対象に比較したところ,静岡より東では6卵が90%なのに,西では55%と少なくなる傾向がみられました.鳥類では北へ行くほど卵数が増えるという一般的傾向があり,ツバメもそれに当てはまるのかもしれません.しかしデータ数が少ないので,来年はもっと多くの方のご協力を得て,卵数調査を行ないたいと考えています.

図3

図3.巣の調査日と卵数.

なお,卵数調査の後も繁殖結果まで記録がある32巣のうち,ツバメが途中で巣を放棄したケースが1件だけありました.しかしこの営巣放棄はフクロウが何度も巣のそばにやってきていたことが原因と考えられるので,卵数調査の繁殖への影響は小さいと考えてよさそうですが,巣内の観察は親鳥の留守中に行い,鏡を巣にぶつけないなど,注意を払って実施する必要があるでしょう.