バードリサーチニュース

20年で分布を拡げた鳥 ~繁殖分布調査からわかること~

バードリサーチニュース2015年6月: 1 【参加募集,活動報告】
著者:植田睦之

 日本野鳥の会,日本自然保護協会,日本鳥類標識協会,山階鳥類研究所,環境省生物多様性センターとの共同事業として来年から調査が開始される「全国鳥類繁殖分布調査」.この調査を行うことで,どんなことがわかってくるのでしょうか?今回は,1970年代と1990年代に行なわれた過去2回の調査結果の比較からみえてきた,暖かい地域に分布を拡げている鳥と,寒い地域に分布を拡げている鳥についてご紹介します.

暖かい地域で分布を拡げた鳥
 暖かい地域で分布を拡げた鳥には大きく分けると2つのパターンがみられました.一つは北方系の鳥が暖かい地域に分布を拡げていったパターンです.このタイプの鳥としてはハクセキレイがよく知られていますが,今回の比較結果にもそれが反映されていました.また,ハシボソガラス,アオジなどもこのパターンに該当しそうです.もう一つは南方系の鳥が,暖かい地域でさらに分布を拡げ,寒い地域では分布を縮小させているパターンです.ホトトギスやサンコウチョウがこれにあたります.

寒い地域で分布を拡げた鳥
 こちらも南方系の鳥が,寒い地域へと分布を拡げているパターンがありました.ヒヨドリがそれにあたります.同じく南方系のメジロやヤマガラも分布を拡げているのですが,これらの鳥は気温に関わらず全体的に分布を拡げていて,特に「寒い地域で」というわけではありませんでした.また,センダイムシクイ,コマドリ,オオルリといった夏鳥は寒い地域で増えているようでした.これがなぜなのかは,よくわかりません.
 前回の調査から20年経った今,分布はさらに変化していると思います.来年からの調査で,それらを明らかにしていきたいと思います.

 

図.■が1970年代,□が1990年代に繁殖が確認されたメッシュ数.ハクセキレイは,気温が低い地域ではあまり違いがみられないが,気温が高い地域では90年代の方が記録メッシュ数が多く,分布が拡大している.センダイムシクイは,年平均気温が7.5~10℃の地域を境に,より寒いところでは分布を拡大し,暖かいところでは縮小している.Photos by 三木敏史

が1970年代,□が1990年代に繁殖が確認されたメッシュ数.ハクセキレイは,気温が低い地域ではあまり違いがみられないが,気温が高い地域では90年代の方が記録メッシュ数が多く,分布が拡大している.センダイムシクイは,年平均気温が7.5~10℃の地域を境に,より寒いところでは分布を拡大し,暖かいところでは縮小している.Photos by 三木敏史

 

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