バードリサーチニュース

研究誌新着論文:山形県蔵王温泉でのジョウビタキの繁殖記録

バードリサーチニュース 2022年8月: 2 【研究誌】
著者:植田睦之

 もともと冬鳥だったジョウビタキですが,本州中部の山地や中国山地では,局所的ですが定常的に繁殖するようになっています。北海道でも繁殖していますが,東北地方はこれまで分布の空白地帯となっていました。ところが,今年,山形県蔵王で繁殖が確認され,それが論文としてまとまりました。


深瀬徹・簗川堅治・高橋ゆう・吉村晶子 (2022) 山形県山形市蔵王温泉におけるジョウビタキの繁殖.Bird Research 18: S5-S8.

論文の閲覧:https://doi.org/10.11211/birdresearch.18.S5

 

巣立ったジョウビタキのヒナと雄親

 2022年6月5日に,深瀬さんが山形県蔵王温泉でさえずっているジョウビタキの雄を見つけました。繁殖の可能性を考えて,日本野鳥の会山形県支部のメンバーで観察をつづけたところ,宿泊施設の配管用の穴に巣を発見し,6月26日には,そこから3羽のヒナが巣立ったのを確認しました。
 標高の高い場所のリゾート地であること,人工構造物で営巣したことなど,本州のほかの場所と共通していました。また,この場所では山形県支部の探鳥会が行なわれていましたが,夏のジョウビタキの記録はこれまでなく,バードリサーチのフィールドノートにも繁殖期の周囲での探鳥記録は毎年数十件はありましたが,ジョウビタキの記録は今年のみで,最近になって繁殖がはじまったものと思われます。東北のほかの場所でもこれから繁殖記録が増えてくるかもしれませんので,注意してみてください。