バードリサーチニュース

web生態図鑑を公開しました オオタカを例に図鑑をひと巡り

バードリサーチニュース 2026年9月: 4 【その他,活動報告】
著者:谷田部佑

写真1:web生態図鑑のトップページ

 これまでの「鳴き声図鑑」と会員向けの「生態図鑑」をひとつにまとめる「web生態図鑑」を公開しました。 鳴き声だけでなく、全国鳥類繁殖・越冬分布調査にもとづく分布の移り変わり、環境省レッドリストの指定状況、バードリサーチの調査やBird Research誌掲載の論文まで、1種のページからまとめてたどれる図鑑です。

 今回はオオタカのページを例に、この図鑑の使い方と、どんなことがわかるのかを紹介します。オオタカは、個体数が減ったことからかつては「国内希少野生動植物種」に指定されていましたが、個体数の回復傾向などを受け、2017年に指定が解除された鳥です。その一方で、日本オオタカネットワークなどと共同で実施しているアンケート調査では、ここ数年の繁殖成績が落ちている可能性もわかってきました。1種のページを順に見ていくと、そうした移り変わりがひと続きの話として読むことができます。

 ぜひ皆さんも、オオタカのページを開きながら読み進めてみてください。

 

基本情報

 種のページは、「基本情報」「調査・研究」「詳細情報」の3つのタブで構成されています。ページを開くと、まず「基本情報」タブが表示されます(写真2)。基本情報タブには、次の内容を載せています。

写真2:オオタカの「基本情報」ページ

1. 鳴き声図鑑の収録データ(解説、鳴き声、生息環境、主な観測月)

 これまで鳴き声図鑑で見られた解説を読んだり、鳴き声を再生することができます。

 

2. 分布

 繁殖期、越冬期の分布の変化をたどれます。繁殖期は1970年代・1990年代・2010年代の3回、越冬期は1980年代と2010年代の2回の調査結果を収録しました。

 地図の作成は、環境省の自然環境保全基礎調査(1970年代・1990年代の繁殖分布、1980年代の越冬分布)と、全国鳥類繁殖分布調査・全国鳥類越冬分布調査(2016年から)の結果をもとにしました。

写真3:オオタカの繁殖期の分布。1970年代(左)と1990年代(右)



 オオタカの繁殖期の分布を見ると、1970年代から1990年代にかけて一気に記録メッシュが増え、この間に生息分布が大きく広がっていることがわかります(写真3)。越冬期の分布では、1980年代と2010年代を比べると、西日本を中心に記録メッシュが増えています(写真4)。

写真4:オオタカの越冬期の分布(1980年代(左)と2010年代(右))

 

 

3. 環境省レッドリスト指定状況

写真5:レッドリストの指定状況の表示

 最新のレッドリストにおけるランクや、存続を脅かす要因、過去の指定状況の変化を見ることができます。(写真5)

 

 オオタカは初版(1991年)で「危急種」、次の改訂(1998年)で絶滅危惧II類(VU)とされたあと、2006年の改訂で準絶滅危惧(NT)に下がり、最新の第5次(2026年)まで準絶滅危惧のままです。分布図で見た回復が、ランクの推移にも表れています。

 ランクが下がったといっても、心配がなくなったわけではありません。存続を脅かす要因として、森林伐採、土地造成、交通インフラや発電施設の建設、農薬などの化学物質汚染が挙げられています。

 

調査・研究

 「調査・研究」タブでは、その鳥に関わるバードリサーチの活動をまとめて見られます。次の内容で構成しています。

1. 進行中のプロジェクト

 バードリサーチで進めている調査プロジェクトのうち、その鳥に関わるものが並びます。

 オオタカの場合は「オオタカ繁殖状況調査」が表示され、クリックするとプロジェクトページが開きます(写真6)。2017年に国内希少野生動植物種の指定が解除されたあとも、日本オオタカネットワークなどと共同で毎年の繁殖状況を記録しているアンケート調査です。

写真6:オオタカ繁殖状況調査のプロジェクトページ

 

2. 研究誌 Bird Research

 バードリサーチが発行する研究誌「Bird Research」のなかから、その鳥を扱った論文や、その鳥が登場する論文が、新しい号から順に並びます。(写真7)クリックすると、論文の公開サイト「J-STAGE」の該当ページが開きます。

写真7:研究誌「Bird Research」の表示

 

3. ニュースレター

 バードリサーチニュースのなかから、その鳥が登場する記事が新しい順に並びます。 オオタカの場合、最新記事は、2026年5月の記事「オオタカの子育てに何が起きているのか」です(写真8)。先述の「オオタカ繁殖状況調査」から得られた結果をまとめた記事で、次のようなことを報告しています。

・2016〜2017年には80%前後あった繁殖成功率が、2024年には57.8%、2025年には49.2%まで下がっていること。

・失敗は、求愛・造巣期や抱卵期など繁殖の早い時期に多く起きていること。

写真8:2026年5月の記事「オオタカの子育てに何が起きているのか」の一部

 

 

詳細情報

写真9:オオタカの詳細情報のサンプル

 

 「詳細情報」タブでは、普通・賛助会員の方向けの会員サービスとして「生態図鑑」を読めるようになる予定です(写真9)。これまでPDFで公開してきた生態図鑑をスマートフォンでも読みやすくレイアウトし直し、web生態図鑑の種のページから直接開けるようにします。現在は準備中で、近日公開の予定です。

 オオタカの項目では、形態や羽色、鳴き声、分布と生息環境、繁殖システム、巣と卵、産卵時期、抱卵・育雛、巣立ち時期と繁殖成功度、渡り、営巣環境、行動圏などを解説しています。

 また、サンプルとしてハシボソガラスとシロチドリの詳細情報を公開しています。ぜひご覧ください。

 

おわりに

 web生態図鑑では、このように分布やレッドリスト、関連する調査プロジェクトや論文、ニュースレターの記事まで、1種のページからさまざまな情報を見ることができます。ほかの鳥でも、気になる種をぜひ開いてみてください。

 また、web生態図鑑の鳴き声や写真の多くは、全国の皆さまからご提供いただいたものです。これからも、写真の募集や参加型調査などを通じて、皆さまと一緒にデータの蓄積や調査研究を進め、その成果とともに図鑑を育てていければと思います。

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