バードリサーチニュース

九十九里浜の2026年繁殖期のシロチドリとコアジサシ

バードリサーチニュース 2026年8月: 3 【活動報告】
著者:守屋年史

 2026年もバードリサーチは、九十九里シロチドリ調査グループの一員として、4月から8月にかけて複数地点を巡回し、繁殖状況の確認、標識調査、GPS追跡を行いました。希少種保全のため、ここでは具体的な営巣地点は示さず、九十九里浜全体の結果として紹介します。


 シロチドリは、海岸の砂浜や河口、干潟などに生息し、砂礫地の地面に巣をつくって繁殖します。かつては各地の海岸で普通に見られましたが、近年は全国的に減少しており、環境省の第5次レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。また、コアジサシは春に日本へ渡来し、砂浜や河川敷、中州、埋立地などの植生が少ない裸地で集団繁殖します。全国的に繁殖地や個体数が減少しており、第5次レッドリストでは絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。
 2種とも砂の上に直接巣をつくるため、海岸侵食や開発による砂浜の減少、人や車両、犬などの立入り、卵やヒナの捕食、天候などが繁殖に影響しています。

 こうしたなか、九十九里浜は長い砂浜が連続して残り、現在もシロチドリやコアジサシが繁殖する、両種にとって重要な場所です。特に、全国的にこの2種が減少するなかで、その繁殖状況を継続して把握することは、地域の個体群を守るだけでなく、日本全体のシロチドリの現状や減少要因を考えるうえでも重要です。

シロチドリは29巣を確認

写真1.孵化したシロチドリ(7月)

写真1.孵化したシロチドリ(7月)

 今年、50kmほどある九十九里浜のうち主に南半分の約25kmを詳細にカバーし、確認したシロチドリの巣は29巣でした。13巣で孵化を確認し、孵化成功率は44.8%でした。このうち5巣は、後述する『Bocchi』の加瀬宏行さんから情報提供を受けました。これまでの孵化成功率の平均が約28%なので、やや高い結果となりました。失敗した16巣のうち、捕食が5巣、放棄が2巣、高潮による水没が2巣、原因不明が7巣でした。

 砂浜の巣は、卵そのものが砂や小石に紛れて見つけにくいうえ、環境の変化を受けやすい場所にあります。調査ではセンサーカメラも使い、孵化の確認や失敗原因の把握を進めています。実際に、捕食(ネコやカラス)のほか、高波による水没や砂への埋没、人の接近などが繁殖に影響したと考えられる例がありました。今後は巣周辺の足跡、卵の状態、波浪の痕跡、人や車両の利用状況などを詳細に記録し、失敗原因を詳しく調べていきます。

標識とGPSから見えてきた個体の動き

 シロチドリとコアジサシの移動や分散、個体識別のため、『NPO行徳自然ほごくらぶ』の佐藤達夫さん、岩崎加奈子さんが中心になり、シロチドリでは成鳥4羽、ヒナ3羽の計7羽に標識を装着しました。環境省リングに加え、野外でも個体を識別できる赤色の刻印カラーリングをシロチドリに、コアジサシには、青色の刻印カラーリングを付けています。

 また、シロチドリには、信州大学の笠原里恵助教と協同で、繁殖中のペア2羽にGPS発信機を6月1日に装着しました。シロチドリのクラウドファンディングの寄付金を発信機の購入代金に充てさせていただきました。ありがとうございます!
 雄は6月26日まで位置情報を取得でき、最初の繁殖に失敗した後、同じ海岸域で別の雌と再び営巣したことが分かりました。雌ではGPSデータを得られませんでしたが、装着地点とは別の場所で後日観察されています。繁殖期のシロチドリが、一つの営巣場所だけでなく、九十九里浜内の複数の海岸を利用している可能性を示す記録です。今後、来期にデータを取得できるように準備する予定です。またもし、この標識個体を越冬期に観察されたら、ご連絡ください(関連ブログへリンク)。

写真2.発信機を背負いシロチドリを探す守屋     Photo by 佐藤達夫

 コアジサシでは、成鳥とヒナを合わせて43羽を新たに標識しました。また、過去に標識した個体も再確認されました。中には2012年に九十九里浜でヒナとして標識され、13年10か月後に再捕獲された個体もいました。さらに、千葉県内の別地域でヒナとして標識された個体が約64km移動し、九十九里浜で確認された例もありました。

 長年にわたって九十九里浜を利用する個体がいる一方、地域を越えて移動する個体もいることが標識調査から見えてきます。標識されたシロチドリ、コアジサシの観察情報は移動や生存を知る大切な手がかりになります。

コアジサシのコロニーは浜を移り変わる

写真3.コアジサシの幼鳥(7月)

 コアジサシは4月中旬から飛来し、約150羽の群れが確認されました。5月には営巣が始まり、6月に入ると九十九里浜の複数地点に繁殖地が分散しました。7月上旬には大きな繁殖集団が形成され、1地点では42巣、別の地点では38巣を確認しました。ところが7月中旬以降、多くの場所で巣数や抱卵個体が減少しました。高波を受けた場所では、卵が砂に埋まって放棄された巣もありました。7月下旬には1地点に約200羽が集まりましたが、その多くは波打ち際で休息している個体でした。

 近年、コアジサシのコロニーが一所で安定しないため、一か所だけを見ていては九十九里浜全体の状況を捉えられません。複数地点を継続して調べることが重要ですが、広範囲なので効率的なモニタリングを行うことが課題です。

砂浜を鳥と人がともに使うために

 5月と6月には「Bocchi concept shop」(千葉県旭市)と連携し、「九十九里浜のシロチドリと砂浜の生きもの観察会」を開催することができました。シロチドリを実際に観察しながら、普段は何気なく歩いている砂浜が、鳥たちにとっては子育ての場所であることを参加者の皆さんと共有しました。

 九十九里浜は長大な一つの砂浜ですが、鳥たちに繁殖場所や休息場所として利用されています。これからも繁殖状況、標識、GPSなど異なる方法を組み合わせて追跡し、シロチドリとコアジサシが安心して繁殖できる砂浜の保全につなげていきたいと思います。

九十九里シロチドリ調査グループ
文責:バードリサーチ@守屋

『九十九里シロチドリ調査グループ』:2015年頃に九十九里浜のシロチドリにカラーリングを標識調査するところから始まった任意団体。コアジサシやヒバリなどの周辺の鳥達も記録しています。また、九十九里浜のみならず砂浜の鳥なら、どこでも対象としています。基本は調査ですが、保全にも貢献できればと活動しています。現在登録15名。