野鳥の不思議解明最前線 #118  植田 睦之
© Japan Bird Research Association 2015


群れるスズメ。スズメの群れでも顔見知り同士がつるんでいたりする? 撮影:内田 博





雌はしっかり保守的?
~ コウウチョウの雌は知り合いとつるむ ~


 今年の鳥学会は神戸開催です。宿はとれましたか? 知人から聞くと宿がとれなくて大変なようです。インバウンド景気が話題になり,去年くらいから中国人観光客のおかげで,大きめの都市はどこでも宿を確保するのがたいへんです。ここのところの上海市場の暴落でこの先どうなるかわかりませんけど・・・。
 さて,学会といえば懇親会。懇親会では,旧友と盛り上がるか,知り合いを増やすために知らない人と話すべきかでちょっと迷いますよね。といいつつ,酔っ払うとどうでもよくなって,端っこの椅子でグダグダしてしまいますが。
 鳥の群れではどうなのでしょうか? 知り合いとつるむ安定を選ぶのでしょうか?それとも新しい鳥と知り合って,新しい採食地などの情報を手にしようとするのでしょうか? 雌は知り合いとつるむ傾向があり,雄はもう少し新しい鳥と関わる傾向にあることがコウウチョウ Molothrus ater の研究からわかってきました。

 この研究をしたのはアメリカのKohnさんたちのチームです。飼育下のコウウチョウをつかって,実験をしました。4つの小屋に分けてコウウチョウを飼育し,同じ小屋で飼われている顔なじみの鳥と,ほかの小屋で飼われていた顔なじみでない鳥を混ぜる実験をして,それぞれの個体がどういう個体と「つるむ」のかを観察したのです。
 すると,1回目の実験では,雌雄とも顔なじみの鳥とつるむ傾向が見られました。顔なじみの方が,安心して,一緒にいられるということでしょうか。1回目の実験を終え,1週間程度時間をあけてもう一度実験をしてみました。2回目の実験では雌雄で反応が変わりました。雌はやはり顔なじみとつるむ傾向が続いたのに対し,雄は顔なじみでない鳥とつるむ割合が増えたのです。さらに面白いところは,1回目の実験と2回目の実験での個体の傾向です。雌にはしっかりとしたポリシーがあって,顔なじみとつるむ個体は,1回目でも2回目でもつるんでいて,つるむ傾向の弱い個体は1回目にも2回目にもその傾向がありました。しかし,雄は1回目と2回目の傾向は一貫していませんでした。かなり気ままな感じ。
 Kohnさんは群れが社会的に維持されていくのに雌が重要な役割をはたしていて,雄が群れの統合など流動性を担っているのではないかと考察しています。それがどうなのかは別にして,単純に雌雄の性格の違いがおもしろいですよね。ぼくもテクニカル分析を参考にしたりはしますが,なんだかんだ株価変動の波に身を任せ,気ままな売り買いをしてしまいます。「ちゃんとやらないから失敗するんだよな」と思うこともままありますが,「雄だからね」と思えばちょっとうれしくもなります。




紹介した論文
Kohn GM,Meredith GR, Magdaleno FR, King AP & West MJ (2015) Sex differences in familiarity preferences within fission–fusion brown-headed cowbird, Molothrus ater, flocks. Anim Behav 106: 137-143.