バードリサーチニュース

行政担当者向けにカワウ上級研修会を開催しました

【活動報告】
著者:加藤ななえ、近藤紀子

魚を食べて生きているカワウは、近年個体数が回復し分布を広げてきたため、漁業被害が訴えられるようになってしまいました。そのため、カワウによる被害を軽減させる取り組みが各地で行われています。バードリサーチでも、カワウと人間との共生を目指し、そのお手伝いをしています。

今回、自然環境研究センターが環境省から受託している業務に協力し、全国の都道府県と市町村のカワウ担当者を対象とした「平成29 年度特定鳥獣の保護・管理に係る研修会(上級編:カワウ)」を府中市で3日間開催しましたので、そのご報告をさせていただきます。

「計画策定の推進」が今回のテーマ

 カワウは空を飛んで都道府県の境界を越えて移動することができるため、都道府県にとどまらず広域的に計画を立てて管理していく必要があります。各地で場当たり的に追い出しや駆除などの対策をしていくと、カワウの分散を招いてしまい、かえって被害地を増大させてしまうという可能性があるからです。現在は北海道から沖縄県までの47都道府県にカワウは分布するようになりましたが、カワウの管理計画を策定している都道府県は、まだ少ないのが現状です。そこで今回の研修では、「都道府県によるカワウ管理計画策定の推進」をテーマとしました。

講義内容のご紹介

 初日の講義は、基本的な知見として環境省鳥獣保護管理室の野川裕史さんから「最

写真1. カワウの生態についての加藤の講義を熱心に聴く参加者のみなさん

新の鳥獣保護管理制度」について、バードリサーチ加藤ななえがカワウの基礎生態について講義を行ないました(写真1)。

続いて、昨年度カワウ管理計画を策定した広島県水産課の後藤さんから、広島県の計画策定についてご講演頂きました。広島県のカワウ管理計画は、県内を地理的特性を踏まえた4つのユニットに分けてそれぞれ計画を立てるという前例のないものです。計画策定時の苦労なども交えてお話しいただき、行政担当者の苦悩をひしひしと感じることが出来ました。今後計画を策定する都道府県の参考になったのではないでしょうか。

 

 2日目は、長岡技術科学大学の山本麻希先生からカワウ対策にかかる予算の確保の方法という行政向けの研修ならではの講義に続き、グループワークを実施しました。

写真2. グループワークの様子

グループワークでは「漁業被害」「生活環境被害」「個体数調整と分布管理」の3つのテーマに分かれて議論を行ないました。それぞれの都道府県、市町村が抱える問題点を明らかにし、その解決策を探っていくというものですが、やるべきことが見えてきたという参加者の声もあり、有意義な時間となりました。なかには、「カワウのねぐらの下でカワウフェスをやることでカワウへの理解と同時にカワウの追い払いを行なう」というアイデアも出され、「どんな意見も否定しない」というグループワークならではの自由な意見交換を行ないました。

 3日目は、具体的な対策事例についての講義を行ないました。まず、三重県津市で市が主導となって実施した生活環境被害対策について、バードリサーチ高木が講義を行ないました。続いて日本一若い漁協組合長である中島さんから、群馬県の両毛漁協で実施しているカワウ対策についてご講義いただきました。カワウが食べても構わないくらい川の魚を増やしていくために、カワウだけを悪者にして対策をするのではなく、魚が多く住めるような河川環境を整備することを目指しているというお話が印象的でした。また、多くの人に川に対する興味を持ってもらい、川に遊びに来てもらえるような活動を積極的に実施しているというお話をいただきました。川と魚を大切に思う気持ちが伝わる、漁協の組合長さんならではのお話でした。

 午後は、中央水産研究所の坪井潤一さんから、最新の対策の事例としてのドローンを活用したカワウ対策をご紹介いただきました。人が接近しにくい場所へのアプローチが可能になるドローンは、今後さらに活用されていくことが予想されます。最後は、野生動物保護管理事務所の加藤洋さんから、捕獲による個体数調整についてお話をいただきました。捕獲の際には常にカワウの動きに注意し、必要であれば捕獲をやめるという判断が求められるとのことでした。

 1日目の講義後に行なった情報交換会も大いに盛り上がり、カワウ担当者どうしの横のつながりも出来たようです。研修終了時のアンケートでは、講師と講義について参加者全員が「満足した」と回答しており、満足度の高い研修だったことが伺えました。

 今後も、カワウと人との共存を目指し、行政担当の方や漁協の方々のバックアップをしていくことで、カワウによる被害の許容範囲を広げていけるように努力していきます。また、行政だけでなく、一般の方々への働きかけも大切になりますので、その工夫も考えていきます。