バードリサーチニュース

研究誌新着論文:イスカの営巣環境と繁殖行動の季節性

バードリサーチニュース2017年6月: 3 【研究誌】
著者:植田睦之

アカマツ林のイスカ(小野安行)


 鳥たちの繁殖期もピークを越えつつあります。河原や公園に行くとスズメやムクドリの幼鳥たちの群れを見ることができるようになりました。こんな「普通の」鳥たちの繁殖期と違う時期に繁殖する鳥がいます。イスカがそれです。青森県での6年間の調査から,その繁殖時期と営巣環境を明らかにした論文がBird Research誌に掲載されました。

蛯名純一・三上かつら:青森県下北地方におけるイスカの営巣環境と繁殖行動の季節性.Bird Research 13: S11-S17.


 蛯名さんと三上さんの調査によると,イスカの繁殖行動が観察されたのは11月から4月にかけての冬期。そして,この時期は調査地のイスカの主要な食物であるクロマツの実が熟す時期でした。さらにクロマツの実が不作だった2012/13年の冬にはイスカは繁殖行動が見られなかったことから,冬の繁殖はクロマツの実りと関係していそうです。海外でも木の実の実る時期に合わせて繁殖時期や繁殖場所を変えるなど,実りに応じて繁殖を調整する能力がありそうです。
 でも,寒い青森の冬。抱卵斑でお腹の羽が抜けてしまうのって,かなり体温が逃げて,負担が大きいように感じます。お腹の弱いぼくなら,トイレから出てこれない人になりそうです。腹の脇の羽がほかの鳥と比べて長くて抱卵しているとき以外はそれでうまくカバーできるとか何か適応があったりするのでしょうか? それとも高カロリーの松の実を食べていれば多少の放熱くらいへっちゃらなのかな? 論文の内容とは直接関係はないけど気になりました。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.13.S11

Print Friendly, PDF & Email