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研究誌新着論文:ルリカケスの早春繁殖

バードリサーチニュース2017年3月: 1 【研究誌】
著者:植田睦之

ルリカケス(撮影:三木敏史)


 ここ数日,各地からツバメの初認情報が届くようになりました。ウグイスのさえずり前線は岩手県まで到達。東京はまだ寒い日も多いですが,雑木林に行くとカラスやエナガが巣づくりに励んでいます。もう繁殖期ですね。今月はそんな早春の繁殖にまつわる論文が公開されました。

谷智子・石田健・高美喜男・森貴久:ルリカケスの早春繁殖における餌資源の考察.Bird Research 13: A1-A13.

 奄美大島に生息するルリカケスは,ほかの鳥よりも早い1月に造巣を開始します。なぜルリカケスは,ほかの鳥よりも早く繁殖できるのでしょうか? そんな疑問に答えるために給餌物やその量を調べたのがこの論文です。
 2011年2月から5月にかけて節足動物相調査,巣内ビナの糞分析,巣内の撮影をしたところ,ルリカケスは昆虫からクモ,ザトウムシ,貝類までさまざまなものを食物としていて,早春から初夏まで,季節の移りかわりと節足動物の状況の変化に応じて食物や採餌する場所を変えて繁殖していました。こうした対応ができるために,早春から繁殖できるのだろうと著者は考えています。
 この調査ではルートセンサス,ビーティング(植物にとまっている虫を棒で叩いて落して捕獲する方法),ピットフォールトラップと様々な方法で膨大な量の昆虫を採集し,また糞中に含まれる未消化の昆虫等も整理しています。基礎的なデータをしっかりとることは重要なことですが,調査もその後の分析も大変で,なかなかできることではありません。ぼくには絶対できないタイプの調査だけに,頭が下がります。

論文の閲覧 http://doi.org/10.11211/birdresearch.13.A1

 

 

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