バードリサーチニュース

図書紹介:野外鳥類学を楽しむ 上田恵介編 海游舎 4,200円(税別)

バードリサーチニュース2016年12月: 1 【図書紹介】
著者:佐藤望

野外鳥類学を楽しむ
上田恵介 編
海游舎
4200円(税抜)9784905930839_0

 

 バードリサーチの植田、佐藤も執筆した、「野外鳥類学を楽しむ」は立教大学の上田惠介名誉教授の研究室に在籍した21人がそれぞれの研究を紹介したものです。 今回は本書について紹介します。

 本書はカッコウの托卵に関する研究や、音声コミュニケーションに関する研究など行動学でよく研究されているテーマや、オオセッカやモズ、ゴイサギなどの繁殖生態に関する研究などが盛り込まれています。内容が多様なため、教科書のように1つの分野に絞って体系的に学べるものではありませんが、各章ごとに完結した内容ですので自分の興味のある章から読んで頂くと良いと思います。また、それぞれの著者が最新の研究をかみ砕いて紹介しているので、理解しやすいと思います。

 各章の研究テーマはそれぞれ異なっているのですが、ほとんどの研究者が長期間、野外調査によってデータを集めているという点が共通しています。本書の著者達の多くは10年以上、継続した野外調査をしているます。文中に「日本では、すぐに成果につながらない基礎研究はずっと軽視され続けて来た」と書かれている通り、このような調査は評価されにくいものです。それにもかかわらず、多くの研究者が野外調査を重視し、長期間行ってきた調査の成果はそれだけで貴重であり、面白いものばかりです。事実、本書に紹介されている研究の中には、新聞やテレビなどに紹介されたものも少なくありません。例えば、ジュウイチのヒナのだまし戦略(4章)や、カラ類の音声研究(9章)は多くのメディアに取り上げられていました。本書では、それらの研究の詳細を知る事ができます。

 また、研究の内容だけでなく、その研究に至った経緯や苦労話がほとんどの章で触れられています。こういった内容は、将来、研究者を目指す若者を意識して書かれているのですが、教科書や専門書では知る事のできない部分なので、研究者を目指す方の進路や研究を決める際の参考になるのではないでしょうか。また、研究者を目指していない方にとっても、研究者達の人間味溢れる一面も知る事ができると思います。

この記事は有料会員限定です。ログインすると続きをお読みいただけます。

入会・会員区分の変更