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生態図鑑 シラコバト

バードリサーチニュース2016年11月: 3 【生態図鑑】
著者:小峯昇
シラコバト

シラコバト

○英名 Eurasian Collared Dove  学名 Streptopelia decaocto 

○分類 ハト目 ハト科

○鳴き声
 「クッ,クー,ク」と2拍目が強い3拍子で鳴く.ディスプレイ飛翔時などに「ウーッ」という声を出すこともある.

○分布
 埼玉県東部を中心に極めて局所的に分布する.世界では,旧北区,東洋区,エチオピア区,ユーラシア大陸南部,インド,アフリカ大陸中部に留鳥として分布する.もともとは東洋区にいたものを人間が小アジアやバルカン地方に持ち込みヨーロッパ各地に広がった.現在では,ヨ-ロッパ全体から北米にまで広がっている.

○生息環境 
 本来の分布地は湿潤な日本とは異なり,乾燥した半砂漠的な疎林のある農耕地である.日本のシラコバトは留鳥として,人家近くの垣根,庭木,防風林等に営巣し「耕作随伴者」とされていたが,近年の観察例では畜舎や工業団地付近でよく見られている.特に冬期は畜舎への依存傾向が強く,夏期にくらべて観察個体数が増える.畜舎で採餌して,その周辺の植え込みや,屋敷林,竹林などに入り休息するが,雑木林の奥深く入り込むことはない.周囲に畜舎がないところでの記録は少なく,畜舎に依存せずに自立している個体は少ないと思われる.また,時々大陸から九州に飛来することもあるようで,Web上でもシラコバトの記録が散見される.

○食性と採食行動
 毎日ほぼきまった時間に採食地に出て採餌をおこなう.餌は植物質が中心で畜舎では穀類,野外では野草,野菜類,種子等とされている.畜舎以外では,耕作地,草刈り後の河川敷や田んぼの畔,河川や耕作地沿いの道路などで,歩き回っていることもある.また人家近くの給餌に集まることもある.

○絶滅危惧にある現状
 江戸時代に狩猟鳥として日本に移入され,御鷹場を中心に保護されてきたが,明治以降の乱獲や,戦後の混乱期にかなり数を減らし,越谷の宮内庁鴨場付近で細々と生き延びていた.その後,狩猟対象から外され,1956年に国の天然記念物,1965年に埼玉県民の鳥,1988年に越谷市の鳥にもなり徐々に数を増やしてきた.この頃,養鶏場の郊外への進出に付随してシラコバトもその分布を広げ最盛期を迎えていたと思われる.
 このように2000年頃までは県東部を中心に近県まで分布域を広げていたが,その後,一転して激減した.その原因として,県内の養鶏場数が1960年の約20万戸から2011年の794戸に激減したことに加えて鳥インフルエンザ防除対策により,餌を依存していた鶏舎への出入りが困難になったこと,増加傾向にあるオオタカなどの猛禽類に捕食されている可能性があると推測されているが,詳細は不明である.
 「県民の鳥」の急減を受けて,埼玉県による実態調査が2012年から始まり,筆者含め11人が,日本野鳥の会の調査を踏まえた現地調査をおこなった.2012年度の調査では,確認個体数として,繁殖期24羽,越冬期76羽,2013年度以降は越冬期の調査で,2013年度107羽,2014年度と2015年度は103羽であった.

◆その他掲載記事
 ・分類
 ・全長,翼長,尾長,嘴峰長,ふしょ長,体重
 ・形態
 ・羽色
 ・繁殖システム
 ・巣,卵,抱卵,育雛期間,繁殖期間
 ・高い繁殖力
 ・保護上の問題

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