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研究誌新着論文:コガネノウゼンに対するメジロの吸蜜行動

バードリサーチニュース2016年3月: 2 【研究誌】
著者:植田睦之

研究誌に1つ論文が掲載されました

籠島恵介:沖縄本島におけるコガネノウゼンに対するメジロの吸蜜行動について. Bird Research 12: S1-S5

 春になり木々の花が咲く季節になりました。まだ虫などの食物が少ないこの時期,メジロが盛んに花の蜜を吸っています。今回掲載した論文は,そのようなメジロの吸蜜行動について沖縄で調べたものです。
 沖縄にはコガネノウゼンという南米原産の植物が街路樹として広く植えられています。この木の花はハチドリを鳥媒花として進化したため,ハチドリのくちばしだけが花蜜に届くように,開口部が狭いチューブ状の形をしています。今回の調査から,くちばしの短いメジロは開口部から吸蜜するのではなく,花弁を裂いたりして(写真)盗蜜していることが分かりました。

コガネノウゼンの花から吸蜜するメジロ(左)とメジロに花弁を裂かれた花(右)

コガネノウゼンの花から吸蜜するメジロ(左)とメジロに花弁を裂かれた花(右)

 

 もう1つ面白いのがメジロがコガネノウゼンの花蜜を吸う年と吸わない年があることです。メジロが普段よく吸蜜しているカンヒザクラやハイビスカスと蜜の量や質を比べると,コガネノウゼンの蜜量はカンヒザクラやハイビスカスと大きく変わらず,糖濃度は大きく上回っていました。この観点からは,コガネノウゼンの蜜はよい食物と言えそうです。では,なぜ吸蜜しない年があるのでしょう。コガネノウゼンの蜜には多くの種類のフェノール配糖体(苦味物質)が含まれていて,ナフトキノン(毒性がある)も含まれているそうです。籠島さんはそのため,ほかに食物が十分にあるときにはメジロはコガネノウゼンの蜜を吸わないのかもしれない,と,考えています。

http://doi.org/10.11211/birdresearch.12.S1

 

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